部長の弱みを握ったら、毎朝コーヒーが届くようになった

部長の弱みを握ったら、毎朝コーヒーが届くようになった

By 高橋 真由

romance · 2026-04-23

銀座の雨の中、紀子は大学時代の知り合い、啓吾と再会する。二人は同じ会社に勤務していた。啓吾は過去の謝罪と食事に誘うが、紀子は戸惑う。会社で啓吾との共同プロジェクトのリーダーに任命されるが、飲み会で会社の御曹司に邪魔される。

第1章

部長の弱みを握ったら、毎朝コーヒーが届くようになった

「黛さん、ですよね?」

降りしきる雨の中、銀座一丁目の交差点で、傘も差さずに立ち尽くしていた私、黛紀子(しらいしりん)は、聞き覚えのある声にハッとした。まさか、こんなところで……。

振り返ると、そこに立っていたのは、深津啓吾(たかみやしょうた)だった。大学時代、たった一度だけデートをして、その後、音信不通になった相手。あれから五年、彼は見違えるほど精悍な顔つきになっていた。

「深津くん……どうしてここに?」

「仕事で。黛さんも、もしかして?」

私たちは、お互いに大手広告代理店、株式会社DREAM PLANNINGに勤務していることを知った。まさか、同じ会社に入社していたとは。

「あの……あの時は、ごめん」

啓吾が、気まずそうに謝ってきた。五年越しの謝罪。今更、何を言っているんだろう。

「もう、昔のことだから」

そう言いながらも、胸の奥がチクリと痛んだ。あの時、一体何があったのか、ずっと心の奥底に引っかかっていた。

「もし、よかったら、今度、食事でもどうかな?あの時のことを、ちゃんと説明したいんだ」

啓吾の真剣な眼差しに、紀子は戸惑いを隠せない。今更、彼に何を求めているんだろう。五年という月日は、私たちを大きく変えたはずだ。今は、仕事に集中したいのに……。

「……考えさせて」

そう答えるのが精一杯だった。雨はますます強くなり、二人の間には、ぎこちない沈黙が流れた。

翌日、出社すると、人事部長から呼び出しを受けた。「黛さん、君には、あるプロジェクトのリーダーを任せたいんだ」。

「プロジェクト、ですか?」

「ああ。深津啓吾くんと共同で進めてもらうことになる。君たちの企画力に期待しているよ」

人事部長の言葉に、紀子は愕然とした。まさか、彼とペアを組むことになるとは。しかも、リーダーとして。一体、これからどうなってしまうんだろうか……。

その夜、会社の飲み会で、啓吾が紀子に近づいてきた。「黛さん、例の食事だけど……」。

「……」

紀子は、彼の言葉を遮るように、グラスを傾けた。すると、突然、背後から鋭い視線を感じた。振り返ると、そこに立っていたのは、会社の御曹司、黒崎颯太(くろさきそうた)だった。彼は、冷たい視線で紀子を睨みつけ、啓吾に何かを囁いた。啓吾は、一瞬、顔色を変え、何かを言いかけたが、結局、何も言わずに立ち去ってしまった。一体、何が起こったのだろうか……。

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