社内恋愛禁止令と甘い罠

社内恋愛禁止令と甘い罠

By 桜井 美咲

romance · 2026-04-23

月宮美緒は、社内恋愛禁止のルールを破り、早乙女勇斗と密かに恋をしていた。しかし、勇斗から偽の婚約者になってほしいと頼まれる。さらに、謎の男から勇斗の秘密を知りたくないかと電話がかかってくる。

第1章

社内恋愛禁止令と甘い罠

「月宮さん、ちょっといいかな?」

朝の静かなオフィスに、私の名前を呼ぶ低い声が響いた。心臓が跳ね上がる。まさか、バレた?

大手IT企業「ネクストステージ」の広報部に勤める月宮美緒、25歳。入社三年目。そして、社内恋愛禁止のルールを破り、密かに恋をしている相手がいる。

それが、企画開発部のエース、早乙女勇斗——誰もが認めるイケメンで、仕事もできる完璧な男。彼と私が、いつの間にか惹かれあっていた。

きっかけは、半年前のプロジェクトチーム。残業続きの毎日、疲れた私を気遣ってくれた勇斗さんの優しさに、最初はただ感謝していた。でも、目が合う回数が増え、帰り道が重なり、二人きりの食事をするうちに、彼の存在が、私の中で特別なものになっていった。

「おはようございます、早乙女さん」

平静を装い、勇斗さんのデスクに向かう。彼はいつものように、涼やかな笑顔で私を見つめていた。「おはよう、月宮さん。例の件、少し話したいんだけど」

「例の件、ですか?」

心臓がドキドキする。まさか、私たちの関係について何か勘づいているのだろうか。それとも、新しいプロジェクトの話だろうか。どちらにしても、勇斗さんと二人きりで話すのは、危険な香りがする。

勇斗さんは、私に手招きをした。「会議室、予約してあるんだ。そこでゆっくり話そう」

会議室に入ると、勇斗さんはドアを閉めた。鍵をかける音が、小さく響く。逃げ場はない。

「あのさ、月宮さん」勇斗さんは少し躊躇するように言った。「実は、君に頼みごとがあるんだ」

「頼みごと、ですか?私にできることなら、何でも」

勇斗さんは、私の目をじっと見つめた。「今度、うちのグループ会社の社長令嬢との見合いがあるんだ」

私の心臓が、一瞬止まった。見合い?勇斗さんが?

「親が決めたことで、断れないんだ。でも、正直、気が進まなくて……」勇斗さんは苦笑いを浮かべた。「そこで、君に、偽の婚約者になってほしいんだ」

「……え?」

勇斗さんの言葉が、頭の中で反響する。偽の婚約者?一体、どういうこと?

「もちろん、君に迷惑はかけない。必要なことだけお願いするつもりだ。それに、報酬もきちんと支払うよ」

報酬?まるで、ドラマのような展開だ。でも、私が勇斗さんの偽の婚約者になるなんて、考えられない。それに、もしバレたら、社内恋愛禁止のルール違反で、クビになるかもしれない。

「……少し、考えさせてください」

私は、震える声でそう答えた。勇斗さんは、少し残念そうな顔をしたが、「わかった。でも、時間がないんだ。明日までに返事を聞かせてほしい」と言った。

会議室を出て、自分のデスクに戻ると、手が震えていた。勇斗さんの見合い、偽の婚約者。頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

その時、私のスマホが鳴った。画面を見ると、見慣れない番号が表示されている。

「はい、月宮です」

電話の向こうから、低い男の声が聞こえた。「月宮美緒さんで間違いないでしょうか? 雨宮と申します」

「雨宮さん、ですか?どちら様でしょうか?」

「ネクストステージの、早乙女勇斗さんのことを調べていまして……少し、お話をお聞かせ願えませんか?」

背筋がゾッとした。誰だ?なぜ、勇斗さんのことを調べている?

「お断りします」

私は、そう言って電話を切ろうとした。

「待ってください、月宮さん。早乙女勇斗さんの秘密を知りたくはありませんか?」

受話器を持つ手が、止まった。勇斗さんの秘密?

「……どういうことですか?」私は、警戒しながら尋ねた。

「それは、会ってからお話しましょう。明日、午後七時に表参道のカフェでお待ちしています」

男は一方的にそう告げると、電話を切った。

勇斗さんの偽の婚約者、そして、謎の男からの電話。一体、これからどうなってしまうのだろうか……。

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